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1999年9月号掲載 よしだともこのルート訪問記

第54回 伝統ある大学と外部技術の調和が支える教育環境
〜龍谷大学 深草キャンパス〜

 今回は龍谷大学注1の深草キャンパスの総合情報棟を訪ね、経済学部 専任講師として情報処理教育に携わっておられる新井 潤(あらい じゅん)さん、そして、ネットワーク管理、運用を担当されている、ワールドビジネスセンターの太口 圭(たぐち けい)さんに話をお聞きしました。また、同大学の文学部 専任講師、寺尾 洋子(てらお ようこ)さんにも話に加わっていただきました。

龍谷大学へは、2004年4月号掲載および 2004年5月号掲載の記事の取材でも行っています。 そちらの記事の内容がより新しいものですので、あわせてお読み下さい。

■サーバーはWindows NTとUNIXの両方で構築

よしだ(以下Y):深草キャンパスの総合情報棟について教えてください。

新井さん(以下A):総合情報棟の情報処理教室は、深草キャンパスにある全学部注2の学生の情報教育注3に使われています。
 私は経済学部に所属していますが、主に共通科目を担当していて、文学部、経済学部、経営学部、法学部の学生を相手に、情報処理の基礎を学ぶ講義やプログラミングの実習などを行っています。
 太口さんは、総合情報棟に常駐されて、ネットワーク管理、運用されています。

太口さん(以下Ta):ワールドビジネスセンターからは、龍大の深草キャンパスに、私を含めて5名常駐しています。それ以外に、瀬田キャンパスに2名、大宮キャンパスに1名、コンピュータ・リテラシー教育を担当している女性2名がいます。

Y:大学側には、システム管理を専門にしている方はいらっしゃらないのですか。

A:はい。総合情報棟に関しては、大学側には持たずにアウトソーシング注4するというのが、ここの方針です。ただし、瀬田の理工学部のコンピュータのシステムは、違った運用がされています。

Y:ネットワーク環境について詳しく説明していただけますか。

A:図1の中心にあるのが、セグメントの分割機能を持つルーター、シスコシステムズのCatalyst 5000注5です。

Ta:この棟には、4フロアーにわたって、31〜65台のパソコンが設置されている教室が10室あります。そのうちの9室でWindows NT Workstationが使われています。メディアLL教室には、Macintoshが41台入っています。
 ほかにも、自習専用のセルフラーニング室があり、WindowsとMacintoshの両方が用意されています。その部屋にはサポート要員の学生アルバイトがいて、さまざまな学生の相談を受け付けています。総合情報棟の学生教育用パソコン(クライアント)の台数を合計すると、約640台あります。

Y:ネットワーク・サーバーは、どうなっていますか。

Ta:教育用のサーバー類は、ファイル・サーバー、PDC(Primary Domain Controller)サーバー、BDC(Backup Domain Controller)サーバー、CD-ROMサーバーなどには、Windows NT Serverが使われています。
 Webサーバー、NISサーバー、ファイル・サーバー、DNSサーバー、メール・サーバー、FTPサーバー、Proxyサーバー、アプリケーション・サーバーにはUNIXが使われています。機種は、Proxyサーバーのみ富士通のS7/7000で、あとはすべてS7/300です。
 学生のログイン認証などはWindows NT Serverで行い、UNIXサーバーでは従来UNIXでしかできなかったこと、たとえば、プロバイダのWebサーバーへのProxyサービスや学内のWebサーバーの仕事をさせています。

寺尾さん(以下Te):各情報処理教室には、教卓システム(CAMPUS ESPer注6)が設置されています。教卓には教師用パソコンと教卓システム用パソコンの2台が置いてあり、これらを使って学生の使用状況の確認注7、個々の学生への指示ができます。学生へは、教師のパソコンの画面、ホワイト・ボードに書かれた文字が表示できます。学生側の席に、ディスプレイが1台余分にあるでしょう。そこに教師の画面を表示させて、学生に見せることができます。
 さらに、教卓システム用のパソコンへ学生の画面を表示させ、キーボード、マウスもこちらのものを使って入力できます。
 また、巡回モニターの機能を使えば、学生の画面を1つずつ、チェックしていけます。

Y:学生は先生から画面をチェックされて不快に思わないのですか? たとえば、メールを書いているところを見られたりしたら、いやだと思うのですが……。それに、自習時間に教卓システムのパソコンを使ってほかの学生の画面を見るようないたずらをする人はいないのでしょうか?

Te:学生には、先生からはみんなの画面がいつでも見えるようになっているといっています。また、この教卓システムは教員のIDでログインしないと使えないので、その点は大丈夫です。

Y:「従来のシステムでは専用のRGBケーブルを使っていたが、CAMPUS ESPerは、画面の転送にイーサネットを使っている」と聞いた記憶があるのですが……。

A:いいえ。教師側の画面を学生に示すときは、センター・モニター・システムというCAMPUS ESPerとは違うものを使います。これは、いまでもRGBケーブルでの接続です。これまでと変わったのは、逆に学生側の画面を、CAMPUS ESPerへ転送する部分です。従来のCAIシステムでは、RGBケーブルを使い、さらに専用の横取り装置が各端末に付いていました。この部分をソフトにして、データ(画面)の転送にイーサネットを使うようになったのです。

Y:それは便利ですね。

図1 龍谷大学 深草キャンパス 総合情報棟ネットワーク図(1999年当時)
総合情報棟ネットワーク図

■学生のメール・アドレス発行やサーバー業務をプロバイダに委託

Y:龍谷大学では、学生のメール・アドレスの発行やサーバー運用などを、外部プロバイダに委託していますね。

A:はい。学生の自宅からの電話のアクセスを受ける回線を大学の計算機センターが持っている場合もありますが、ここではその業務を外に出しています。つまり、学生は生協インターネットというプロバイダのアクセス・ポイント注8を、自宅からでも自由に使えるようになっています注9
 全学生のメール・アドレスがプロバイダから与えられ、大学内で授業中にメールを読み書きする場合も、メール・サーバーやWebサーバーとして、プロバイダのものを使うことになります。アカウントの発行時に、学生に対して「インターネット・マナー講習会」を実施しています。

A:また、学内の図書館や就職課などでも、各自が自分に届いたメールを読めますが、総合情報棟のシステムとは別管理なので、POPで取り込んだメールは、別の場所に保存されてしまいます。そこで、別管理の場所のパソコンのメーラーは、あらかじめ「メールをサーバーに残す」設定にしてあります。ただし、その設定を学生がうっかり変更してしまうと、「一度読んだメールがなくなった」と困る結果になります。
 本大学では、先に教育系で「生協インターネットを利用しよう」と決め、それが便利だということで、図書館や就職課でも利用するようになったという経緯があるため、このように別管理になっていますが、最初からトップ・ダウンでシステムが構築されていたら、また違った運用ができていたはずです。

Ta:自宅からプロバイダに接続する学生がメールを取り込む場合、どちらかのメーラー設定を「サーバーにメールを残す」としておけば、届いたメールをいずれかにまとめて置くことができます。ただ、そこまでしている学生は少ないので、両方でメールを読み書きする学生のために、「大学の環境で取り込んだメールを、簡単にフロッピーに展開して家に持って帰れる」というツールを作りました。

Y:それは便利ですね。ところで、外部のメール・サーバーを利用するという形式は、これから、ほかの大学や教育機関で増えると思われますか。

A:学内にメール・サーバーを置くことで発生する業務を内部でやらなくてすむのですから、これからもっと増えるのではないでしょうか。
 龍谷大学のように、「システム構築、管理にはお金がかかるものだ」ということが認識されている場合は、外部にその業務を委託するような体制が作りやすいわけです。そのような認識がないところでは、難しいでしょうね。

Y:これまでのルート訪問先でも、教員や学生が、本来の業務のプラス・アルファとして、ほとんど無料奉仕でシステム管理することの是非がよく話題になっています。

■学生のハードルは低くするべき? 高くするべき?

Y:新井さんと太口さんのご関係は?

Ta:新井さんは、私のよきアドバイザーです。ただ、2人の間で意見が食い違うときもあります。主に学生のハードルをどこに置くかですね。私は学生のハードルは低くしたいと考えていますが、新井さんは必ずしもそうではないようです。
 私は学生が使うパソコン(Windows NT)の設定をこちらが工夫しておくことで、苦労せずに使い始められる環境を作ることが必要だと考えています。ユーザー数を増やしていく注10ためには、コンピュータは使いやすいものであるべきで、迷うことなく使えるのが理想だと思います。
 たとえば、学生が何かアプリケーションを使っていて「名前を付けて保存する」を選んだとき、ファイルを保存する場所に各学生個人のファイルを保存する場所(この大学の環境ではネットワーク・ドライブQ)が最初に選ばれるように設定しておけば、「保存したはずのファイルが見つからない」注11という、パソコン初心者が経験しがちな問題を防げます。
 インターネット関係でいえば、Proxyの設定であるとか、メール(POPとSMTP)サーバーの設定などを、初めての学生にやらせるのではなく、できる限り自動的に設定しておくのが理想注12だと考えています。
 そうすれば、「あれ、簡単に使えちゃったな」と思う学生が増えます。「最初のハードルはなるべく低く」できるわけです。その間に、学生がコンピュータの面白さを分かってくれて、そのあとで、より奥の部分を勉強してもらうというのがよいと考えています。
 でも、新井さんの考えはちょっと違って、「教育的にはそれではよくないのではないか」ということです。

A:導入を簡単にするのは賛成です。最初のハードルは低くていいと思いますから、いまの例に出てきた程度のことを、あらかじめ設定しておくのはいいことです。ただ、その先が問題で、そのままハードルを低くし続けているのは、よくないと思っていて、どこで壁を作るかが問題ではないでしょうか。
 その辺の考え方が違うわけで、太口さんはいろんなものに対して、どんどん使いやすい環境を整備しようとしますが、僕は、たとえば、ワープロが使えるところまで簡単にできてしまったら、あとはある程度高いハードルをだんだんと設ける方がいいと考えています。
 太口さんは、いま学生がホームページを作って公開するために、ファイル転送(FTP)が必要ない環境を作ろうとしているのですが、僕は「そこまですべきではない」と反対しています。

Ta:いまなら、学生が自分のファイルを保存するQドライブの所定の場所にHTMLファイルを作れば、それを自分のホームページとして公開する仕組み作りも可能です。そうすればFTPというハードルが必要なくなります。

Y:これは、コンピュータを使い始める学生の層や数にも関係してきますよね。いまのように、どんな学部のどんな学生でも、全員、使えるようになることが望まれている時代には、ハードルを低くしないと仕方がないというケースが増えているということでしょう。どこまでを「どんな学生でも使える最低ライン」にするかですよね。

Ta:学生にネットワーク環境を使わせたい先生や、自分が活用したい先生から「より簡単な環境を提供してほしい」という希望が多いのです。いろんな学部がありますから、コンピュータはやりたくない、つまり、先生自身もややこしい操作はしたくないし、学生にも教えたくない、つまり、単に英語の勉強に使いたいとか、情報の検索や発信だけを行いたいという先生は、ファイル転送の仕組みや操作を教えるのに時間をかけたくないわけで、より使いやすい環境を要求されます。
 逆に、新井さんのような情報処理の先生は、徐々に高いハードルを設けるべきだと思っておられるので、どこに照準を合わせて環境を作るかは難しいところです。

A:この大学もそうですが、現在は多くの大学で、学生にコンピュータのリテラシーの部分注13をどう身に着けさせていくかを実行している最中で、それがうまくいけば、事態は改善されます。つまり、英語の先生が英語の電子メールやWebページを書くという授業の中で、コンピュータについて一から教えなくても学生の方が操作できるようになっていれば、いまの問題はかなり解決されます。

Te:それに、コンピュータ(やインターネット)を道具として使っている先生方が、必ずしも、学生にリテラシーを教えられるとは限りませんし。

Y:今後、高校に「情報」という科目が新設されるに当たり、高校の先生にある程度の講習会をして「情報」を教える予定ですが、そう簡単なことだと思えないんですよ。

A:ある程度の講習会で、「情報」の内容を身に着けて教えられるようになる先生もいると思いますが、そうでない先生もいるでしょう。これまでは、そういう先生はコンピュータを使おうとしなかったから問題はなかったのですが、いまは、コンピュータが使えると便利だし、みんな使っているから使うようになってきたわけです。そのときに、そういう先生がどうするかというと、分かる先生に頼り切ってしまうわけです。

Y:実は私は、ここ数年、高校や大学で使われるべき「ネットワーク・リテラシー教育」のカリキュラム、教材作り注14に取り組んできました。よいカリキュラム、よい教材を用意すれば、より多くの先生が、きちんと教えられるようになると思うんですが……。

A:高校レベルでは、統一カリキュラムや教材も有効かもしれませんが、本来、大学というのは専門教育をするところです。現在は大学の一般教養科目の教育が、高校の学習の延長になっているので、そういう流れにもなるのでしょうが。とくに、コンピュータに関しては、自分の専門外という先生まで、その教育に駆り出されています。
 こういった背景もあり、短絡的に「コンピュータの使い方を教えることは、企業の講習会(業務委託)に頼ればよい」という考え方の先生がずいぶんいますね。大学の情報教育はそれではダメなんですけどね。
 今後中学・高校できちんと教育するようになれば、大学で高校レベルの教育をする必要はなくなるでしょう。そうなってしまえば、大学の先生方が、コンピュータを利用して自分の専門を活かした授業がやりやすくなるはずです。
 いまは、授業でコンピュータを使わせようとすると、先生方は、自分の守備範囲外まで教えることを要求されているわけですから。

■Windows NTの技術ドキュメントは不足している?

Y:システムの構築や運用に関しての苦労や工夫を教えていただけますか。

A:たとえば、学生がどんなアプリケーションを使っていても「名前を付けて保存する」を選んだときに、ファイルを保存する場所として自動的に各学生のホーム・ディレクトリが最初に選ばれるように設定するというのは、システム管理上の話ですよね。

Ta:残念ながら、すべてのアプリケーションでできるようになっているわけではないんですけどね。どうしても設定変更できないアプリケーションもありますので。

Y:そのためのシステム上の苦労について、話していただけますか。何百人もの学生の環境に対して設定を変更するのは大変な作業でしたか。

Ta:確かに、約2万人のユーザーが登録されているので、すべての環境を維持するのは大変です。ソフトウェア、OSは学生が卒業するまでの間に次から次へとバージョンアップを繰り返しますから。
 初めてログインを行う学生に関しては、すべての初期画面、初期設定を同じにするよう心がけています。初心者の多い授業では「先生のいわれたとおりに入力できません」というトラブルが多発してしまうからです。
 ソフトウェアによってはマシンにログインしたとき、各種の設定内容は、何度変更しても毎回、同じになるようにしているものもあります。それ以外は、本人が理解したうえで設定を変更したものについてのみ、その環境を保存しておき、次からも反映させています。

Y:Windows NTならそれも可能だと思いますが、Windows 95でもできるのですか?

Ta:はい。Windows 95、98でも同じようなことができますが、NTの方がまだやりやすいように感じます。でも、NTと95の環境を共有するのは難しいです。

A:そのあたりは、UNIXとはまったく違うため、「UNIXならこういうことができるから、できるでしょう」といっても、「それはできない」と太口さんからいわれることもあります。「こういう設定をしてほしい」といったことに対して、太口さんが苦労して設定されているのを見て、「UNIXなら簡単にできるのになあ」と思ったこともあります。
 それから、UNIXと比較して、Windows NTの設定関係の技術ドキュメントは、あまり出回っていませんね。

Y:たとえばどのようなドキュメントですか?

Ta:Windows NTの「信頼関係」という機能を使えば、このドメインで登録されたアカウントが、別のドメインでも使えるようにできます。つまり、相互乗り入れですね。この機能自体は非常に便利ですが、信頼関係を築いたあとの設定についてのドキュメントがなかったので、新井さんと設定をいろいろ変更してみなければなりませんでした。

Y:Windows NT技術者は、UNIX技術者のように、他人のためにドキュメントを書かないということでしょうか。

A:信頼関係自体が新しい機能で、マイクロソフトもそういう機能を作ってはみたものの、まだ十分に運用されていないということでしょうね。

Y:なるほど。Windowsのネットワーク環境構築注15について知らないことが多いので、勉強になりました。

 今回の取材には、山下佳士さん、大西三和子さんも加わってくださったことで、より楽しく取材ができました。ありがとうございました。

学生へのハードルは?
注1 龍谷大学
1639年(寛永16年)、京都西本願寺境内に「学寮」を設置したのが龍谷大学の始まり。わが国屈指の歴史を有する大学。夜間主コースも設置されており、平日の夜間や土曜日を中心に学べるうえに、卒業に必要な単位の半分までは、平日の授業で取得できる。
http://www.ryukoku.ac.jp/

注2 深草キャンパスにある全学部
深草キャンパス(京都市伏見区)にある学部は、文学部の1、2年生、経済学部、経営学部、法学部、それらの大学院、そして短期大学部である。

注3 情報教育
龍谷大学では深草キャンパスのほかに、瀬田(滋賀県大津市)と大宮(京都駅から徒歩の距離)にキャンパスがある。瀬田キャンパスには、理工学部と社会学部と国際文化学部があり、大宮キャンパスには、文学部の3、4年生と文学研究科の大学院がある。瀬田キャンパス、大宮キャンパスともに、それぞれ情報処理教室を持っている。

注4 アウトソーシング
コスト削減効果などの目的で、業務を外部に出すこと。日経BPから、'99年4月に「アウトソーシングの時代」(村上世彰他著、206ページ、ISBN 4-8222-9114-6)という書籍が発行されている。部門別のコスト削減効果を定量的にはじき出したほか、実際のトラブルを丹念に分析しているのが特徴。

注5 Catalyst 5000
シスコシステムズ(http://www.cisco.com/)発売のLANスイッチ。トラフィックの集中するバックボーン・ネットワークやサーバーなどに接続するための高速LANインタフェースとして、FDDI/ CDDIのほかにATM(非同期転送モード)やファースト・イーサネットなど最新技術もサポート。また、ネットワーク管理装置からGUIを使って論理的なネットワーク・トポロジーの変更が容易になるバーチャルLAN機能にも対応。

注6 CAMPUS ESPer
日本DECより販売されていた、Windows NT/95環境で実現する情報教育支援ソフトウェア。主な機能は次のとおり。
  1. だれがどの席で何を学習しているかの一元管理
  2. 先生機より指定した生徒機に教材や見本画面を転送
  3. 先生機より指定した生徒機の遠隔操作や一時的な操作停止
  4. 先生機から一括してシャットダウンやログオフが可能

注7 学生の使用状況の確認
学生が、いま何をやっているかが画面表示できる。学生のフルネーム、学籍番号も表示できるので、出席している学生を確認できる。もっとも、出席をとる機能は別に付いていて、出席者一覧をCSV形式のファイルに出力できる。

注8 生協インターネットというプロバイダのアクセス・ポイント
学生は、プロバイダの持つ全国28か所のアクセス・ポイントを自宅からも利用できるため、ほとんどの場合、市内料金でアクセスできるというメリットがある。

注9 自由に使えるようになっている
プロバイダを利用して、全学生にインターネット利用サービスの提供がスタートしたのは、'97年12月から。これは、大学では日本初である。学生のメール・アドレスは、アカウント名@ryukoku.seikyou.ne.jpとなる。プロバイダとの契約料、使用料は大学が負担。電話通話料は学生負担。

注10 ユーザー数を増やしていく
ここでいう「ユーザー」とは、授業以外でもパソコンを使う学生を指す。つまりユーザーとは、空き時間などにパソコンの部屋にきて、ネット・サーフィンしたり、チャットしたり、電子メールの交換をしたりして、パソコンを積極的に活用している学生のこと。

注11 保存したはずのファイルが見つからない
確かに、多くの学生は、ドライブやディレクトリ(フォルダ)の概念を理解する前に、ファイルを作り、保存や呼び出しを行うことになる。また、学生によっては、自分に届いたメールのファイル容量が増えることで、自分が使えるディスク容量(龍大の場合は10Mバイト)を圧迫することを意識していない場合や、逆に、10Mバイトという容量を気にしすぎて、届いたメールを片っ端から消している場合もある。

注12 自動的に設定しておくのが理想
太口さんが管理されている総合情報棟のWindows NT環境では、ほとんどのアプリケーションに対して、ファイルを保存する場所は自動的に各学生のホーム・ディレクトリが最初に選ばれるように設定されている。Proxyの設定やメール(POPとSMTP)サーバーの設定も各学生がする必要はない。

注13 コンピュータのリテラシーの部分
いまは、コンピュータ(やインターネット)を授業で活用したいと思った先生は、コンピュータの使い方の基礎の基礎から教えないといけない。「これは、鉛筆の持ち方を教えないと字を書かせられないようなもので、本来は大学で教えるようなものではない」と、寺尾さん談。

注14 「ネットワーク・リテラシー教育」のカリキュラム、教材作り
ネットワークを使い込む能力を、それまでの情報処理教育で身に着くものとは別のものとして考えているのが特徴。このカリキュラム、教材は、書籍『学校で教わっていない人のためのインターネット講座〜ネットワークリテラシーを身につける〜』として、8月に北大路書房から発行される。有賀妙子、吉田智子著。http://www.tomo.gr.jp/Internet/参照。

注15 Windowsのネットワーク環境構築
「Windowsのネットワーク環境構築」のノウハウが蓄積されつつある一方で、クライアントをPC UNIXにする試みも増える傾向があり、今後の動きが興味深い。ちなみに、'99年9月14日〜16日の3日間、大阪南港ATCにて、COMMUNET '99(COMMUNICATIONS and NETWORKING EXPO '99)が、'99年関西圏最大のITイベントとして開催される。主催は、(社)大阪国際見本市委員会/(社)日本能率協会であるが、今年からは、筆者がかかわっている日本Linux協会(実は、副会長だったりする……)も協賛の1つとなり、Linux関連の展示や講演を企画している。今年5月のEric Raymond京都講演会に続き、関西のLinuxコミュニティの結集するイベントになりそうだ。

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Last modified: Mon May 21 14:52:22 JST 2007 by Tomoko Yoshida