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第35回 フリー・ソフトと商用ソフトの平和的共存を目指して



1997年12月号 UNIX USER誌掲載「ルート訪問記」の過去記事

第35回 フリー・ソフトと商用ソフトの平和的共存を目指して

今回は、観光気分で訪れたホテル日航東京の「ベイサイドカフェ」
(東京都港区台場 [注1])にて、山野惠一郎 (やまの けいいち
ろう)さん[注2]、佐渡秀治 (さど しゅうじ)さん[注3] と、
LinuxやFreeBSDに代表されるフリーのPC UNIXについて話したとき
の様子をお届けします。なお本稿では、PC UNIXという用語を
「LinuxやFreeBSD、NetBSDなどのフリーなもの」として使用してい
ます。


*フリーは「ただ」ではなく「自由」

私(以下Y):山野さん、佐渡さん、お久しぶりです。まずは、
dp/NOTE for Linux/BSDの商品化の実現 [注4]、おめでとうござい
ます。

山野さん(以下K):今年7月に弊社(オムロンソフトウェア)か
らWnn6 for Linux/BSD [注5] が発売されていたこともあって、多
くの方々から「オムロンソフトウェアが商用UNIX用に販売している
ワープロを、LinuxやFreeBSD上でも動くようにしてほしい」といわ
れていました。こんなに早く実現できて、私自身とても喜んでいま
す。

 LinuxやFreeBSDに代表されるフリーのPC UNIXの世界はとてもオー
プンで、よりよくしようと考えている方々が実際に行動が起こせる、
つまり自由に参加できる世界です。ここが商用のOSとは異なる、最
大の魅力なのでしょう。

佐渡さん(以下S):確かに「貧乏だからしょーがない」と、PC
UNIXを選ぶケースもあるかもしれませんが、やはり「自由」がある
から選ぶという方がはるかに多いと思います。たとえば、GNUはフ
リー・ソフトウェアの代名詞のようにいわれますが、GPL [注6] 
では対価をもらうことを禁じていません。すなわち「フリー=ただ」
ではなくて、「自由」にソフトウェアを扱えることだと私は解釈し
ています。リチャード・ストールマン氏も、「フリー・ソフトウェ
アとは、ただ(無料)のソフトウェアという意味ではなく、自由な
ソフトウェアという意味 [注7] だ」といっています。

K:OSの上で動くソフトウェアに関しては、「それがフリーであろ
うが商用であろうが、よいソフトウェアは積極的に使用していく」
というPC UNIXユーザーが多いようです。より多くの商用ソフトウェ
アがPC UNIXの市場に入ってきて、市場自体が活発になることを望
んでいる方が多いのです。

S:今回、PC UNIX用日本語ワープロが出たことで、国内において
もPC UNIXが企業内で市民権を得るきっかけとなるかもしれません。
これまで、PC UNIXがホビー用途と見られていたのは、企業内のOA
分野で使えそうに見えるツールが、PC UNIX上で動いていなかった
からだと思います。しかし、多くの組織のネットワーク管理者が、
「Windowsをネットワークに組み入れることに疲れ果てている」と
いう事実がありますので、PC UNIX用日本語ワープロ登場のインパ
クトは意外に大きいことでしょう。すぐにWindows+Wordの牙城を
崩すということはあり得ませんが、LinuxなどでもMule+TeXでない
ワープロ環境が存在するという事実がいまの状況を変えていくと思
います。

 古きよきBSD的なUNIXの基本は、Emacs(Mule) [注8] で文書を
作り、TeXで整形・印刷するスタイルです。いくら「Emacsは高機能
のエディタだ!」、「TeXはすばらしいシステムだ!」と叫んでみ
ても、一般のPCユーザーには簡単に使いこなせるものではないでしょ
う。

EmacsとTeXの複雑さが「UNIXは難しい」というイメージに、大いに
起因していると思います。まあ、シェル・インタフェースの要因の
方が大きいのかもしれませんけど:-)。

Y:シェル・インタフェースは愛想がないし、ワープロはないし、
プリンタに印字する設定は難しいしと、PC UNIXには高い高いハー
ドルがあったと思います。

S:そのとおりです。EmacsとTeXを自由に使いこなしている人がPC
UNIX上の商用アプリケーションを出そうと懸命になっているのは、
そのような「初心者でも使える環境」を選択できるようにしたいと
考えているからでしょう。フリー・ソフトウェアの中にも安定性や
性能などに優れたものが多く存在しますが、商用ならではの凝った
インタフェースが必要な人も多いのです。つまり、同じUNIXの土俵
でもあらゆる選択肢を用意することで、システム自体の発展を願っ
ているわけです。

 この流れにのって、オムロンソフトウェアだけではなく別のベン
ダーもPC UNIX市場に参入することになれば、ますます面白くなる
んですけどね。オムロンソフトウェアにとっては、喜ばしいことな
のか分かりませんが:-)。

K:競争があってこそ、各メーカーの商品は発展していくと思いま
すから、よいことだと思いますよ。それに、この市場はユーザーの
声が入りやすいので、私たちメーカーの人間としては大変ありがた
く思っています。もう少したてば、各メーカーからいろいろなワー
プロが販売されるのではないでしょうか。ただ、日本のワープロ・
メーカーの参入よりも、海外のワープロ・ソフトウェア(UNIXで動
作しているもの)の日本語版が出てくる方が早い気がしますが……。

Y:それは楽しみですね。そうなると、ますます「Solaris+
dp/NOTE+Wnn6の商用ソフトウェア環境を使う」とか「PC UNIX+
Mule+Wnn4などのフリー・ソフトウェア環境を使う」といった画一
された利用形態から、「フリーだろうと商用だろうと関係なく、好
きなOSと好きなエディタ(ワープロ)を選んで使う」というスタイ
ルに変っていきますね。

 ただ実際は、「気に入ったものを使う」という単純なものではな
くて、「周りの人が使っているものを選ぶ」、「その環境で標準的
に使用されているものを使う(使わざるを得ない)」ケースが多い
と思いますが。

S:考えてみれば、組織内のWindowsユーザーがWindowsというOSを
使っているのも、企業や教育機関でそれが標準となっているからで
あって、本来はどんなOSでもよいはずなんです。「みんなが使うか
ら使う」が一番もっともな図式で、マイクロソフトはそれで成功し
たのではないかと思います。

 もし、組織のトップが「今日からLinuxを使う」などと恐ろしい
ことを断行したとしても、トラブルはあまり起きないかもしれませ
ん。OS上でWordとExcel、そして電子メールの読み書きが可能なら
ば、文句をいうユーザーは少ないでしょうから。もちろん、現状で
は難しい話ですが。

 ただ、システム管理者の立場からすれば、UNIX系システムの方が
都合のよいことが多いですよね。Linuxがフリーズすることは、めっ
たにありませんし……。

Y:以前、ルート訪問の取材に行った大学でシステム管理者の方が、
「システム管理しやすいOSは、ユーザー管理機能を標準的に持って
いるUNIX系OS。でも、とくに文系大学の場合、WordとExcelを学生
に身につけさせたいということになると、結局、Windowsを導入せ
ざるを得ない」とおっしゃっていました。

S:これがやはりネックですね。実際は、Wordを教えても就職する
ころには確実にバージョンアップしているでしょうから、学生時代
にはどんな種類のワープロにしろマスターしたということの方が重
要だと思うのですが……。文系大学では、あまり考えないのかもし
れません。

K:でも過去に、私が出入りさせていただいた文系単科大学では、
「WordとExcelだけを教えていたのでは、PC教室と同じになってし
まう。大学なんだから、何か特色のあるコンピュータ教育を!」と、
学生が授業で使うためのUNIX WSを導入したというケースもありま
した。それで、UNIX版dp/NOTEを導入されたわけですが、「自分で
タイピングした文字がプリンタから印字される」この何気ないこと
でも、初めてコンピュータに触れる学生には新鮮な驚きだと聞いた
ことがあります。

Y:私も覚えていますよ。初めてワープロを使った日の感動を:-)。


*日常、文書作成などに使っているソフトウェア

Y:話は変りますが、エンド・ユーザーにとって重要なのは、実際
に文書作成や電子メールの読み書きに使うソフトウェアの使い勝手
だと思います。

 私の場合は、古典的だといわれそうなのですが、文書作成は
Emacs(Mule)、電子メールの読み書きはMH(mh-e) [注9] を使っ
ています。これを基本として、かな漢字変換には、Wnn6のjserver
+たまご(egg)+egg-mix [注10] を利用しています。さらに、ファ
イルが添付された電子メール(MIME形式で添付された文書)に対応
するためには、tm(Tiny Mime)というEmacs-Lispを使っています。
これは、フリーで提供されるツールとは思えないほど充実したもの
です(コラム1参照)。

 Windows 95を使う場合も、Muleの環境を確保するためにMule for
Windows [注11] を使っています。

S:私は最近、ワシントン大学で開発されたIMAP4 [注12] 対応メー
ラーPINEをインストールしてみました。MIME関係の扱いも結構楽で
すし、IMAP4対応ということでメール・フォルダをサーバーに置け
る点はうれしいですね。まあ、ユーザー・インタフェースがキャラ
クタ・ベースなのも気に入った理由なんですが。

 実は、学内のメール・システム用としてIMAP4(RFC 2060)には
非常に注目しています。私がシステムを管理している学園では、
UNIX(Linuxを含む)マシンは、私の作業環境を除いてすべてイン
ターネット・サーバーとしてのみ存在しており、学生や教員が実際
に使う環境はほぼ100パーセントWindowsなんです。

しかも演習室には、学生が自由に使えるWindows 95マシンを100台
以上置いています。このような環境では、POP3ベースの運用は非常
に難しいわけです。ローカルのマシンを誰が使うのか分からないん
ですからね。現在は、Windows NTとの組み合わせで何とか運用して
ますが、IMAP4ならフォルダをサーバー側に置くことになるので、
根本的な問題が解決できます。ただし、まだIMAP4対応のクライア
ントが充実していないのがネックですね。キャラクタ・ベースの
PINEを一般的なWindows 95ユーザーに使えとはいいにくいですから。

 しかも、まだIMAP4自体の可能性が分かっていませんし、セキュ
リティ面への不安もあります。JPCERT/CC [注13] からIMAPに関す
る報告も出てますしね。いまは実験段階ですね。PINEそのものは日本語
対応版もあるのでお勧めです。

ただ、よしださんには悪いのですが、漢字変換用にCannaがビルト
インされているんですけどね:-)。

Y:別に悪くないですよ。Wnnがビルトインしてあった方が、より
うれしいだけです。ところで山野さんは、文書作成や電子メールの
読み書きにもdp/NOTEを使っていらっしゃるんですよね。

K:はい。会社でdp/NOTEを使用する際、80パーセント以上が電子
メールの読み書きです。実は、dp/NOTEのメール送受信機能では
sendmailシステムを使用しており、POPによるメールの受信には対
応していません [注14]。つまり、会社や学校などの組織内でのメー
ルの読み書きに使うことが前提となっています。もちろん、POPに
よる受信に対応した方がよいことは分かっているので、これは
dp/NOTE for Linux/BSDの次期バージョンの検討課題とさせてくだ
さい。


*Linuxな人とBSDな人の傾向

K:話は変わりますが、佐渡さんとよしださんは、Linuxな人とBSD
 [注15] な人とでは一般的にどのような違いがあると考えていらっ
しゃいますか。

Y:昔から大学で、あるいは会社でUNIXを使っているような、理系
出身の方にBSDな人が多いと思います。「TeXで万事OK! UNIX上に
日本語ワープロなんていらないよ」といい切るような人も、BSDな
人に多いのではないでしょうか。一方、Linuxな人の主流は、元
(あるいは現役の)PC使いでしょう。もちろんLinuxな人の中にも、
大昔から「UNIX一筋」の方はいらっしゃいますし、理系の方も多い
と思うのですが、BSDな人と比較して、絶対数が多い分「もともと
はPC使い」が多いのではないでしょうか。

S:間違ってはいないと思いますが、それがすべてではないですね:-)。
BSD原理主義者やLinux原理主義者という人もいるけど、どちらかと
いったらLinuxの方がアンチ・マイクロソフトの姿勢を示す人が多
いのかもしれません。

 これに対して、BSDな人には絶対的なBSD原理主義者という方もい
たりしますね。それが悪いとは思いませんし、Linuxよりも優れて
いる面も結構あると思います。個人的には、Linuxの何でもアリア
リの混沌とした風潮が好きです。ただ、それほどBSDとLinuxを比較
する必要はないのではないかと思います。確かに生まれも性格も違
いますが、目指すところにそれほど大きな違いはないように思いま
すので。

Y:とくに、ユーザーが使うソフトウェアは、BSD用もLinux用も同
じGNUに代表されるフリー・ソフトウェアが移植されたものなので、
結局それほど違いはないんですよね。これは最近、誰かさん(?)
の影響で両方使うようになって、やっと実感したんですけどね。

K:私は、LinuxとBSDの両方とも、熱心で親切なユーザーが本当に
多いと実感しています。今回のdp/NOTE for Linux/BSDにしろ、 ’
97年7月に販売したWnn6 for Linux/FreeBSDにしろ、Linux/BSDの
ユーザーの皆さんには、いろいろな面で助けていただきました。

Y:ところで、Linux、FreeBSD、NetBSD [注16] などを合計した、
日本におけるPC UNIXのユーザー数はどのくらいなんでしょうね。

S:日本のLinux/FreeBSDユーザーは、熱心な信者は1万人程度で
はないかと思いますが('97年当時)、普通の信者の数は読めないで
すね。基本的に販売時にインストール(バンドル)されている
Windowsなどを消し去ったり領域を分けたりしてから、わざわざイ
ンストールし直しているので、商業的にみるとPC-UNIXユーザーの
多くはマイクロソフト・ユーザーとして数えられるわけですからね。

K:’96年10月にスタートしたLUS(Linux Users Survey)Project
 [注17] では、日本のLinuxユーザー数や使用状況、どのような日
本語商用アプリケーションを希望しているかといったデータをWeb
上で集計しています。実のところ、このプロジェクトの活動が、
Linux/BSD用Wnn6やdp/NOTEを発売する大きな影響力にもなりました。

 このプロジェクトのメンバーをはじめとする、PC UNIXを支えて
いる多くの人たちの「Wnn6やdp/NOTE for Linux/BSDを育てていこ
う」という態度には、本当に感謝しています。これからもユーザー
さんと一緒に進んでいき、日本にPC UNIXをもっともっと広めてい
ければと思います。

S:商用だろうがフリーだろうが関係なく、自由にソフトウェアを
扱えることは重要だと思います。そういう意味では、商用でありな
がらもMuleなどとの共存を模索しているWnn6の姿勢、および個人ユー
ザーの利用を考えてTrueTypeフォントを含むという決断をした
dp/NOTE for Linux/BSDには、非常に好意を持っています。

Y:PC UNIXのユーザー向け商用アプリケーションという市場、商
用のLinuxディストリビューション [注18] という市場は、日本で
も今後ますます大きくなると思います。今日はどうもありがとうご
ざいました。



[注1]  東京都港区台場

フジテレビの新社屋のある地域周辺を「お台場」と呼び、修学旅行
生および若いカップルの人気スポットとなっている。東京ビッグサ
イト(国際展示場)へ行く際、新橋から東京臨海新交通「ゆりかも
め」に乗ると、この「お台場」を経由することになる。


[注2]  山野惠一郎さん

オムロンソフトウェア(株)のソフトウェアプロダクト営業部に所
属している。


[注3]  佐渡秀治さん

稲置学園総合情報センターに所属している。UNIX USER誌にて、
「Happy UNIX Life」を執筆中。


[注4]  dp/NOTE for Linux/BSDの商品化の実現

佐渡さんと山野さんの両名は、連名によって、「dp/ Note for
Linuxアンケート」のページを実施された(山野さんは、オムロン
ソフトウェアの社員としてではなく、Linuxユーザーとして参加)。
ここで集められたユーザーからの熱い声が、メーカーを動かしたよ
うである。


[注5]  Wnn6 for Linux/BSD

’97年7月のバージョンはLinuxとFreeBSDのみのサポートだったた
め、「Wnn6 for Linux/FreeBSD」という商品名だったが、今後は
BSD/OSとNetBSDにも対応するため、「Wnn6 for Linux/BSD」という
商品名に変更される。


[注6]  GPL

GNU Public Licenseの略。Richard Stallman氏率いるFSF(Free
Software Foundation)が行っているGNUプロジェクトの成果物に対
するライセンスの形態で、「GNUを配布する人はほかの人がそれを
再配布することを禁じてはいけない」というもの。GPLの日本語訳
は、 http://www.hotwired.co.jp/matrix/9709/1_4.html 
に掲載されている。


[注7]  自由なソフトウェアという意味

これらの発言に関しては、リチャード・ストールマン氏へのインタ
ビュー記事( http://www.hotwired.co.jp/matrix/9709/2_5.html )
などを参照してほしい。また、GNU Emacsのソース(etc/INTERVIEW)
には、「Byte」(’86年7月号)のリチャード・ストー
ルマン氏へのインタビュー記事が含まれている。


[注8]  Emacs(Mule)

「イーマックス」、「ミュール」と発音する。Emacsを、工業技術
院電子技術総合研究所の半田剣一さんを中心とするグループが多国
語化したものがMuleである。これまでは、Emacsの多国語版がMule
ということだったが、現在、EmacsとMuleは統合され、多国語の機
能を持つEmacs 20(Mule 3.0)が 
ftp://ftp.gnu.ai.mit.edu/pub/gnu/  で配布されている。


[注9]  MH(mh-e)

「エムエッチ」、「エムエッチ・イー」と発音する。MH(Message
Handler)というメールを読むコマンド群をEmacsから利用するため
に用いられるものがmh-eである。


[注10]  egg-mix

「エッグ・ミックス」と発音する。西村武司氏が作成したもので、
CTRL-\でのモード切り替えをせずに日本語と英字を入力するEmacs
の言語入力メソッド。 ’97年10月号のルート訪問記で詳しく紹介
しているので参照してほしい。


[注11]  Mule for Windows

宮下尚氏が作成した、Windows 95/NT用のMule。CD-ROM付の書籍
「便利に使おう Mule for Windows活用入門」(宮下 尚著、カット
システム発行、ISBN4-906391-51-6)を利用すれば、手軽にインス
トールできる(ハードディスクにインストールせずに、CD-ROMドラ
イブ上からMuleを起動することも可能)。


[注12]  IMAP4

POP3よりフレキシブルな活用が可能なプロトコル。POP3では、メー
ル・サーバーのスプール上にたまっているメールを取り出すだけで
あったが、IMAP4ではサーバー上のメールを操作することができる。
最初にヘッダー情報だけを取り出し、そのあと選択されたメールの
本文だけを取り出すような使い方ができる。 ’96年にRFC 2060と
して規定されたIMAP4 rev1では、メール・フォルダの多国語化、検
索時の多国語化(国際化)についての仕様が追加された。


[注13]  JPCERT/CC

’96年10月から正式に活動を始めた日本コンピュータ緊急対応セン
ター。CERTは、Computer Emergency Response Teamの略。詳しくは、
http://www.jpcert.or.jp/ を参照。


[注14]  POPによるメールの受信には対応していません

#1998年に発売された、「dp/NOTE for Linux/BSD の Ver.2」では、
POPによるメールの受信にも対応されている(1999.7.25 よしだ)。


[注15]  BSD

Berkeley Software Distributionの略。アメリカ、カリフォルニア
大学バークレー校が開発したUNIX。AT&Tベル研究所が’78年にリリー
スしたUNIX V7を独自に拡張したもの。Bシェルを拡張したCシェ
ル、画面エディタvi、termcap、仮想記憶、TCP/IPに基づくネット
ワーク機能、ジョブ制御などの機能を提供している。これらの機能
は、System V Release 4やOSF/1にも取り入れられている。 ’93年
に配布された4.4BSDが、バークレー版UNIXの最後のバージョンであ
り、完結版でもある。


[注16]  NetBSD

フリーのPC UNIXの1つ。カリフォルニア大学バークレー校のCSRG
(Computer Systems Research Group)が開発したBSDの流れを汲む
OS。386BSDにパッチを当てると同時に新しい機能を追加したものと
して、 ’93年4月に配布されたNetBSD 0.8が始まり。 ’94年10月
に、NetBSD 1.0がリリースされた。FreeBSDとの違いは、インテル
のCPUのみに特化しない点。


[注17]  LUS(Linux Users Survey)Project

Linuxユーザーの数と使用状況のデータを集めることを目的とした
プロジェクト。日本におけるLinuxユーザーの数や状況を把握する
ことにより、この市場向けの商用アプリケーションを販売するメー
カーの数やソフトウェアの種類を増やし、結果的により豊かなコン
ピュータ環境を作り出すことを目的としていた。


[注18]  商用のLinuxディストリビューション

’97年11月中旬、パシフィック・ハイテック発売の「TurboLinux日
本語版1.0」(4,900円)も、Linuxディストリビューションの1つ
である。同パッケージは、とくに日本語環境の強化に力を入れたも
のである。詳しくは、http://www.pht.co.jp/turbolinux/ を参照。

#1999年7月1日、パシフィック・ハイテックは、「ターボリナック
ス・ジャパン株式会社」に社名を変更した(1999.7.25 よしだ)。


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コラム1 

mh-eでの画像ファイルの送受信法

 筆者は、ルート訪問先の方や編集部とネットワーク図など、画像
ファイルのやり取りが多い。従来、UNIX上ではファイルをtarコマ
ンドで固めて、gzipコマンドかcompressコマンドで圧縮し、それを
uuencodeコマンドで変換して送受信することが多かった。

% ls
genko.txt  network.gif  picture.bmp   ← これらのファイルを送りたい

% tar cvf all.tar *    ← すべてのファイルを all.tar というファイルに

% gzip all.tar         ← all.tar.gz  という圧縮ファイルに

  (圧縮には、compress コマンドを使うこともできる。
   % compress all.tar   とした場合の圧縮ファイルは、all.tar.Z )

  (なお、 % tar cvf all.tar * ; % gzip all.tar  の部分は、
    % tar zcvf all.tar.gz *  という風にまとめることもできる。)

% uuencode all.tar.gz all.tar.gz  > tomoko  
  ← uuencode で、メールで送れる形式にエンコードする。

  (この時、tomoko というファイルは、begin 644 all.tar.gz という行から
   始まり、end の行で終わるファイルとなる。)

% mail メールアドレス  < tomoko    ← メールで送る


 このようにして送られたメールを保存したファイル(begin 644
all.tar.gzという行から始まり、endの行で終わる)を、元の3つ
のファイルに戻すには、以下のような操作を行う。

% uudecode 届いたメールを保存したファイル名   ← all.tar.gz  ファイルができる

% gunzip all.tar.gz     ← all.tar というファイルができる

  (all.tar.Z という名前の場合は、% uncompress all.tar.Z    とすると、
   all.tar ができる)

% tar xvf - < all.tar
genko.txt
network.gif
picture.bmp

  ( なお、% gunzip all.tar.gz ; % tar xvf - < all.tar  の部分は、
    % tar zxvf - < all.tar.gz  という風にまとめることもできる。)


 メールを受け渡しする相手がUNIXを使っている場合、このような
方法がいまなお行われているが、最近では画像ファイルやワープロ
の文書ファイルなどのバイナリを、自動的にMIME(Multipurpose
Internet Mail Extensions)エンコードしてメールで受け渡しする
ことも多い。とくに、相手がWindowsやMacintoshユーザーで、
Eudoraなどのファイルの添付機能を持つメーラーを使っている場合、
画像ファイルは人間がデコード/エンコードを意識することなく、
簡単に受け渡しできる。画面Aは、Eudoraのファイル添付機能を使っ
て送信されたメールである。

 ここで、もしUNIXのMH(mh-e)でメールを読み書きしているなら
ば、守岡知彦さん(morioka@jaist.ac.jp)が作成したtm(Tiny
Mime)というEmacs-Lispが役に立つ
( ftp://ftp.jaist.ac.jp/pub/GNU/elisp/mime/tm-7.106.tar.gz か
ら入手可能)。

これをインストールしておけば、相手がファイル添付してきたメー
ルをワンタッチでMIMEデコードできて大変便利である。

 そのうえ、tmはmh-eだけではなく、MuleやXEmacsなどを含む
Emacs全般でMIMEを扱うツールなので、GNUS、RMAIL、VMにも対応し
ているのだ。

 インストール方法は、tm-7.106.tar.gzを解凍し、READMEファイ
ルを読めば分かるだろう。tmディレクトリで、

# make install EMACS=mule

を実行したところ、筆者の環境では /usr/local/lib/mule/site-lisp/
の下にtmディレクトリができ、ここに関連するEmacs-Lispファイル
がインストールされた。

 実際に使うには、

・環境変数TM_TMP_DIRにファイル格納ディレクトリを指定
・~/.emacsに (load "mime-setup") と記述

といった設定が必要である。あとは、相手から送信されたメールの
ファイル名の部分にカーソルを合わせて“e”と入力すると、ファ
イルが格納先ディレクトリに格納される。

 また、メールを受け取る場合だけではなく、メールにファイルを
添付して送る場合にも、tmは大変有効である。tmをインストールし
ておくと、たとえば、

M-x mh-smail

として、メール送信画面を起動したとき、通常は“Edit”である
Muleのメニューが、“MIME-edit”となる。その中の“describe
MIME editor mode”が、オンライン・マニュアルなので、これを読
めば使用方法が分かるだろう。なお、バイナリを添付する方法は、
“Insert File”を選択し、ファイル名を指定したあとencode形式
(base64)を選択すればよい。

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コラム2 

フリー・ソフトウェアと商用ソフトウェアの共存方法

●Wnn4とWnn6の平和的共存

 以前、通産省の工業技術院電子技術総合研究所を訪ね、Muleの開
発を担当されている方々(戸村 哲さん、半田剣一さん、錦見美貴
子さん、高橋直人さん)にお会いした際に、「Muleの開発者として、
商用のWnn、すなわちWnn6が出たことに対してどう思われますか?」
と質問しました。これに対する戸村 哲さんの回答は、以下のよう
なものでした。

 商品化されて権利が制約されたものは、可能性が限定されて販売
されています。何かしたいと思ってもできない代わりに、できます
よといわれたことは必ずできる。反対に、MuleやWnn4のようにフリー・
ソフトウェアとしてソースをユーザーに提供しているものは、完成
度は低いかもしれないけれど、ある程度は動いて、ユーザーが何か
したいと思ったときに自分でソース・コードが修正できる。それは
それで、ユーザーにとっては、とても魅力があるわけです。

 きちっと商品化されたものと、フリー・ソフトウェアという2つ
の構造は、どちらがなくなってもやはり困るものです。ですから、
商品化されて変換効率の高いWnn6と、フリー・ソフトウェアとして
の魅力を持ったWnn4の両方が、今後ともわれわれに供給され続ける
ことを願います。

 そのためには、たとえば、Wnn7やWnn8が出たらWnn6で使われてす
でに商品価値がなくなった技術をオープンにして、Wnn4に取り入れ
てもらえれば、1つのものから派生した2つのものが平和共存して
お互いがよりよいものになっていくと思います。

 Muleの開発者としての、メタな興味は「フリー・ソフトウェアと
商用ソフトウェアの共存」にあります。MuleとWnn6とが、それぞれ
の立場を守りながら協力していく方法を探りたいと思っています。


●「Wnn4 Strikes Back!!」Wnn4再生計画がスタート!!

 Wnn6が発売されて2年以上たったいまなお、多くの人がWnn4を使
い続けています。それは、戸村さんも述べていらっしゃるように、
「Wnn4はフリー・ソフトウェアとしての魅力」を持っているからで
しょう。ただ現実としては、Wnn4はWnn6が出た時点からバージョン
アップされておらず、 ’94年10月にリリースされたWnn 4.2が最新
バージョンのままです。

 このように、Wnn4のバージョンアップがストップしていることに
危機感を持ったWnn4ユーザーの有志が、「Wnn4再生計画」を計画し
ています。pubdic辞書の語彙数を大幅に増やす準備や、Wnn4のデフォ
ルトのパラメータ値をより変換効率のよいものに変更する準備が進
められています。

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(UNIX USER誌連載「よしだともこのルート訪問記」より)
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