はじめに
「インターネット講座」の初版は1999 年に出版されました。その冒頭で，次のように問いかけています。
「インターネットなんか知ってるよ。今さら，勉強することなんてない」と思っている人は，その程度の差こそあれ，多いのではないでしょうか。
それから15 年が経ち，インターネットはさらに普及し，新型携帯デバイスや新しいサービスが生まれています。その結果，インターネットの利用範囲は広がり，社会のさまざまな場面に一層深く浸透しました。今の小学生から大学生は，物心ついた時には，新聞やテレビ放送と同様に電子メールやWeb コンテンツというインターネット上のメディアが身の回りにあった人たちです。彼らは，その親世代が「パソコン＋ブラウザ」でインターネットを利用していたのに対し，「スマホ＋アプリ」からインターネットを利用することが多くなっています。ひとり一台の手軽なデバイスが，インターネット上メディアを使い慣れさせ，彼らは基礎知識や技法を学ぶより前に，それらを利用しているわけです。そのような状況のなか，本書が目的とするネットワークリテラシーを習得する重要性は，ますます高まっているといえます。
インターネットにおいて，電子メールとWeb ページはコミュニケーションの中核です。この本では，その技術と作法を具体的に説明しています。従来からのコミュニケーション手段には，会話，電話，ファクシミリ，手紙などがありますが，これらによるコミュニケーションや情報交換のやり方，作法，ノウハウなどは，子どものころから家庭や学校であるいは仕事を通じて，教えられ，身につけてきました。そこには長い実績が存在します。同様に，インターネットによるコミュニケーションにおいても，学ぶべき知識や技法があります。それらはきちんと教えられているでしょうか。相手が求める情報を的確な形で伝えるという観点からみると，メディアが異なっても多くの共通点があります。その一方で，インターネットは旧メディアにはない特徴があるがゆえに，別の知識や技法や姿勢が求められます。それを私たちは「ネットワークリテラシー」と呼びました。
本書は，子どものころからインターネットが身近な人も，そうでなかった人も，インターネットをコミュニケーション手段として使う場合に，基礎として知っておくとよいことを説明しています。しかし，ネットワークリテラシーを学ばないでいると，コミュニケーションにおいて残念なことや，恥ずかしいことや，恐ろしいことが起こりえます。勉強，研究，仕事に使う「パソコン＋ブラウザ」の環境でネットワークリテラシーを学ぶことは，マイナスなできごとの発生を防ぐためにも，かつインターネット上の情報を十分に活用するためにも，特に大切です。
新しいデバイスやWeb コンテンツなどの登場に伴い，ネットワークリテラシーを支える知識や技術も変化します。「インターネット講座」はその発行から5年後に「新・インターネット講座」として改訂を行いましたが，このたび，さらに変化に対応するため，「改訂新版 インターネット講座」を発行することとなりました。新しい本でも，ネットワークリテラシーの学習に関する中核部分はそのままに，インターネットをめぐる新しい状況，技術に合わせて関係する内容を書き換えました。制作編ではHTML5の基本仕様に基づき記述を変更し，一部の新しいタグの説明を加えました。また，高度な機能をもつソフトウェア部品が簡単に使えるようになった状況を考え，応用編ではJavaScript に関係する説明を増やし，プログラミングの理解が深められるように配慮しました。
この本は，インターネットを使うためのハードウェアやソフトウェアの設定方法や，操作方法の解説書ではありません。道具は身近にありますし，操作を覚えるのもそうむずかしくありません。より重要なのは，それを活用する技術や作法，知識を身につけることです。それを知ることは，インターネットが社会の重要なコミュニケーション手段となっている時代に生きるあなたの使命でもあります。そして，インターネットをおおいに勉強，研究，仕事に役立ててください。インターネット上のコンテンツは社会をも変える力をもちます。インターネットを活用することで，あなたのパワーも今よりも，もっともっと大きくなることでしょう。
改訂新版の発行にあたり，協力いただいた方々，編集に多大の努力をしてくださった北大路書房の奥野浩之氏に感謝いたします。最後に，『改訂新版 インターネット講座』の発行を喜んでくれている著者の配偶者たちにも，この場を借りてお礼を言いたいと思います。
2014年2月
有賀妙子
吉田智子
大谷俊郎