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第8回 自ら舟を作りインターネットの波に乗る



1995年9月号 UNIX USER誌掲載「ルート訪問記」の過去記事

第8回 自ら舟を作りインターネットの波に乗る

今回は、東京大学付属病院の前にある調剤薬局「水野」(東京都文
京区)を訪ねました。「水野」は、自社開発の「薬剤師支援システ
ムLiberty System [注1]」を導入し、本システムを商品として外
部に販売しています。また、本システムを導入しているユーザー・
サイト(薬局)との間にネットワークを構築しています。

「水野」で情報戦略を担当されている水野 善郎(みずのよしろう)
さん(薬学博士)に、「DIY(Do It Yourself)FireWall」、
「Livingston PortMaster/MoningStar PPPを使用してのプライベー
ト・インターネット」、「Ascend Pipeline 400/Pipeline50を使用
してのプライベート・インターネット」、「expectを使ってポケベ
ルにネットワークから漢字メッセージを送る」、「SunOSブータブ
ル・ハードディスクをクローン(複製)するシェル・スクリプト」、
「濾過(ろか)槽なしの無脊椎動物(サンゴ)水槽」などの話題に
ついてお話しいただきました。


「水野薬局のインターネットへの取り組み」

*アメリカのUUNETに接続してビジネスにインターネットを利用

私(以下、Y):初めまして。

水野さん(以下、M):こんにちは。何から話しましょうか。

Y:まずは、ものすごく初歩的な質問からですが、水野さんのメー
ル・アドレスの最後の部分が“.COM” [注2] ですね。なぜ“.jp”
ではないのですか?

M:ずるしたくなかったからです。

Y:えっ?

M:うちの会社は、5年ほど前からインターネットにアクセスして
おり、当時日本には商用インターネットのサービスがなかった 
[注3] でしょう。JUNET [注4] につながせてもらうことはいくら
でもできたのですが、利用を学術研究用に限定しているJUNETに会
社がつないでも、ビジネスには使えないわけです。それなら最初か
ら、はっきりと「商用に使える」インターネットに参加したいと思
い、アメリカのUUNET [注5] にUUCP [注6] で直接つなぎました。

Y:なるほど…。アメリカのUUNETに直接つながっているんですね。

M:以前は、月10万円程度の電話料金を支払って、アメリカまで国
際電話をかけてUUCPでメールとニュースのサービスを受けていまし
た。KDDにそれだけの大金を貢いでたんですね。日本で商用インター
ネットが始まったのを機に、アメリカへのUUCP接続から、日本のイ
ンターネット・サービス・プロバイダへの専用線によるIP [注7] 
接続に切り替えました。日本のプロバイダを経由してUUNETにアク
セスするようになったので、国際電話を使う必要はなくなり、便利
になりました。


*外部との接続時に二重のFireWallを

M:IP接続するようになったときに、セキュリティのために
FireWall [注8の設定と、WWW [注9] サーバーの立ち上げをしま
した。FireWallとしては、ルーター [注10] によるパケット・フィ
ルタリングと、ゲートウェイ [注11] によるユーザー・チェックの
二重の壁を設けました。

Y:それが、「DIY(Do It Yourself)Fire wall」ですね。

M:そうです。第1の壁がルーターで、第2の壁がゲートウェイで
す(図1)。

 ルーターによるパケット・フィルタリングの設定では、インター
ネット(外部)から送り込まれるすべてのパケットを廃棄するよう
にしています。そして、サーバーのアプリケーションを動かしなが
ら、必要に応じて通過させるプロトコルを設定し直す方法をとって
います。

 ゲートウェイでは、IPパケットを中継しないように設定していま
す。社内のユーザーがインターネットにアクセスする場合は、一度、
ゲートウェイにログインし、ゲートウェイ上のインターネット・ア
クセス用プログラムを起動させます。あらかじめゲートウェイに登
録されているユーザーだけが、インターネットにアクセスできるわ
けです。その一方で、ゲートウェイに毎回ログインするのが面倒、
またはできないユーザーに便利なProxy機能 [注12] というものが
あります。

 POP [注13] は、SMTP [注14] でメール・ボックスに着いた電子
メールをEudoraなどのパソコンのクライアントで読めるように変換
し、提供してくれます。さらにCERN httpd [注15] も、ユーザー・
サイト側のクライアントに対して、外部のWWWサーバーからHTML
[注16] のファイルが持ってこられるようにProxyサービスをしてく
れるように設定できます。そもそも、うちのプライベート・インター
ネットでは、内部で「でたらめな(unofficial)IPアドレス [注17]」
を使っているため、直接外部へ接続させるわけにはいかないのです。

Y:なるほど。ところで、水野薬局はWWWのサーバーを提供されて
いるそうですが、作られたのも水野さんですね。

M:はい。WWW(http://www.drug.COM/)は、去年の夏に作ってず
とほとんどそのままでした。少し前に、お魚のカラー画像などを入
れたのが、唯一の改訂ですね。このWWWは、Netscape 1.1以上のイ
ンラインのJPEG [注18] が使えるビューアーで見ていただけると、
一番きれいに見られます。

 JPEGは、GIF [注19] などに比べて圧縮率が高く、写真などの圧
縮に適しているんですよ。


*インターネットをビジネスに使う

Y:ところで、最近、インターネットが異常なほどに注目されてい
ますよね。

M:いまのインターネットの一番の問題は、「インターネットでビ
ジネスしよう」と思っている人が多いことです。「インターネット
をビジネスに使う」が、本来の姿なのに、誤解している人が多いよ
うに思います。たとえば、「電話でビジネス」と「電話をビジネス
に使う」とは違うでしょう。「電話でビジネス」だと、ダイヤルQ
2ぐらいの使い方しかないでしょう。

 そういう意味で、うちでは、「インターネットをビジネスに使う」
ことを、ここ数年にわたって進めてきたわけです。とくに、小文字
のインターネット(internet)の方をね。

Y:ええっと、この小文字と大文字の使い分けについて、教えてい
ただけますか?

M:“internet”と“the Internet”は、違った意味で使われます。
小文字のインターネット(internet)は、インター・ネットワーキ
ングのことで、LAN [注20] とLANをつないでいこうというものです。
とくに、TCP/IP [注21] を使ったLAN間接続というのが多いと思い
ます。

 たとえば、うちのコンピュータで、TCP/IPで接続できないのは、
経理の人が使っているPC-9801たった1台だけなんです。「ネット
ワークしてなきゃ、コンピュータじゃない」という感覚が社内に出
ているくらいの使い方をずっとしてきたわけです。それが、小文字
のインターネットです。大文字のインターネット(the Internet)
の方は、世界のコンピュータ・ネットワークの集合体を指す固有名
詞です。

Y:なるほど。水野さんのところでは、internetを長年やってこら
れて、それと同時に、大文字のInternetとも接続されているという
ことなんですね。


*プライベート・インターネットを構築

Y:この会社とLiberty Systemのユーザー・サイトとを結ぶ、「プ
ライベート・インターネット」を構築されているそうですね。

M:この場合の「インターネット」とは、さっきいっていた小文字
のinternet、すなわち、インター・ネットワーキングの範囲を社内
だけではなく社外へも発展させた形だといえます。このために、何
と、うちの会社は第二種電気通信事業者 [注22] の届け出をしてい
るんですよ。郵政省に「ユーザー・サイトとを結ぶネットワークを
構築したい」と申し出たら、「届けを出してください」といわれた
ので、半日かかって書類を書いて出しました。

Y:第二種電気通信事業者って、インターネットのサービス・プロ
バイダのことですよね。

M:正確には、インターネットのサービス・プロバイダは、特別第
二種電気通信事業者 [注23] です。うちの場合は、プロバイダといっ
てもお金を取るわけではなく、うちのシステムのユーザーがうちの
ネットワークを経由して、the Internetにアクセスできるようにし
ているというわけです。

 日本のサービス・プロバイダがまだやっていないこと、すなわち、
双方向のダイヤルアップもやっています。Internetから届いたパケッ
トをこっちから電話をかけて、ユーザー・サイトに届けるわけです。
おもしろいのは、機材としてIIJ [注24] なんかが使っているのと
同じものを使っていた点です。たとえば、LivingstonのPortMaster
というルーターなども、商用プロバイダが使っているのと同じよう
ですよ。


「水野さんのUNIX徹底活用術」

*サーバーのメッセージをポケベルに届ける

Y:ポケベルにネットワークから漢字メッセージを送っていらっしゃ
るそうですが。とても不思議です。どのように実現しているんです
か。

M:商品カタログには載ってないのですが、「漢字メッセージの送
れるポケベル NTT DoCoMo自由文型ポケベル [注25]」というのが
この世には存在しているんですよ。あまり売りたくない商品らしく
て、カタログにも載っていませんが。でも、欲しいっていったら売っ
てくれました。商品にはPC-9801用のフロッピーが1枚付いてきて
「これで作成した文章を送ってください」といわれたんですが、
「PC-9801なんてもうソフマップ [注26] に売っちゃったよ」とい
うことで、サンから使えるようにプログラムを自分で書きました。

Y:その結果、サンで入力した漢字を含む文字列がポケベルに送れ
るようになったわけですね。PC-9801からではなく。:-)

M:デモを見せましょうか(水野さんが、別のフロアの社員に
「『私はどこ?』というメッセージを私のポケベルに送ってくださ
い」と電話で告げた1、2分後、ポケベルがピピピと鳴って、「私
はどこ?」という文字がポケベルに届く)。

Y:本当に、漢字のメッセージが届くんですね。1つ前のメッセー
ジも見てもいいですか。

M:これは、コンピュータから直接送られてきたメッセージで、サー
バー(HANAという名前)がリブートしたことを知らせています。7
日12時41分のことです。うちのメインのサーバーがリブートしたと
きは、絶対何かあったということだから、私が知る必要あるんです
よ。それで自動的に送るようにしてあります。

何をやっているかというと、サーバーがリブートするときには、
rc.localに記述してある「rshでモデムの付いているワークステー
ションにメッセージを送る」というコマンドが働くわけです。その
メッセージを受けた、モデムの付いているワークステーションが、
ピポパピポと自動的に電話をかけて、私のポケベルにメッセージが
届くという仕組みです。

Y:そのからくりを使えば、電子メールなどが届いたという情報も
送れるわけですね。

M:はい。syslogのメッセージをポケベルに送るとか、電子メール
が届いたというメッセージをポケベルに送るとか、いろいろとでき
るわけでしょうが、そう頻繁にピッピピッピ鳴ってもうるさいだけ
なので、私の場合はサーバーがリブートした場合などの重大な情報
を送るようにしてあります。あとは、セクレタリーから私への伝言
も、簡単に送れるようにしています。これは、アメリカでは普通の
ことのようですが。だって、漢字を使わないのなら、ポケベルに文
章を送ることなんて、何でもないことでしょう。

Y:たしかに、そうですね。どこにいても、ワークステーションの
出すメッセージが自動的にポケベルに届くなんて、びっくりしまし
た。

M:「どこにいても」じゃなくて、私の場合は東京都内だけね。ハ
ワイにいても届けばいいな。

Y:ポケベルのメッセージは、ハワイには届かなくてもいいですよ。
ハワイにいる時は仕事のことを忘れたい。:-)でも、電子メールが
ハワイからも読めたら、あっちで仕事を…なんてことも可能になり
ますね。


*ハワイにいてもメールが読める?!

M:ハワイには、aloha.net [注27] というローカル・プロバイダ
が、観光客用に2週間あたり30ドルで、インターネットの接続サー
ビスを提供しているんですよ。

Y:えっ? そうなんですか。

M:PowerBookを持って行ってPPP [注28] で接続すれば、自分に届
いた電子メールを読むことをはじめとして、日本でやっていること
すべてがハワイでもできます。アメリカの場合、市内通話料金はた
だ同然 [注29] ですし、プロバイダに支払う金額は日本とは比べも
のにならないくらい安いですから、本当に安心して休暇が楽しめま
すよ。「telnet aloha.net」を実行し、guestでログインすると、
オンライン・サイン・アップができますよ。

Y:ということは、自分に届いたメールを読みたいだけなら、ハワ
イに出発する前にaloha.netに観光客用のアカウントをもらってお
いて、それと同時に、日本の自分のメール・サーバーの.forwardファ
イル [注30] にメールの転送先のアドレスを書いて、届いたメール
を自動的にハワイに転送するようにしておけば、ハワイから日本の
マシンにtelnetをする必要なく、メールが読み書きできるというわ
けですね(まめちしき@参照)。

M:そうですね。

Y:本当に便利な時代になったものですねえ。急に、ハワイに行き
たくなってきました。:-)

 ところで、水野さんが作られた、サンからのメッセージをポケベ
ルに送るプログラムというのは、雑誌で紹介 [注31] してもよいも
のなのですか?

M:いいですよ。ただし、フリー・ソフトウェアのTcl [注32] と
expect [注33] をインストールしておくことが前提になります(ま
めちしきA参照)。プログラムの中にコメントとして使い方を詳し
く書いておきましたので、使われる方にはそっちを読んでもらいま
しょう。ただし、このプログラムは、「動けばいいや」って短時間
で書いたもので、動いているから使っているという程度の暫定版な
んです。それだけ分かって使ってもらえるなら、いいですよ。

Y:それはありがとうございます。


「水野さんが語るルートの心がまえ」

*人間は間違えるもの、機械は壊れるもの

Y:ベテラン管理者としての、管理の秘訣を教えてください。

M:秘訣といえば、私は自分が触らなければならないシステムは、
みんな同じにしておくことが一番楽だし、好きなんですよ。

 それとは相反するものとして、オープン・システムというものが
あります。いろんなものが相互接続できるという考えです。これに
もよい点はあります。2種類以上のものがあれば、比較ができます。
たとえば、2種類のコンパイラでコンパイルすれば、自分たちが悪
いのか、コンパイラが悪いのかがすぐ分かるでしょう。異なったも
のは最低限2種類あればよくて、逆にそれ以上は種類を増やさずに、
なるべく均一化するというのが、ルートとして楽をする秘訣ではな
いかと思います。

 また、どうしたら1つのシステムをもう1つクローン [注34] で
きるかを常に考えています。手間がかかっても、その方が結果的に
は楽なんですよ。たとえば、お客さんにシステムを納入したときに
は、同じディスクを2台、SCSI [注35] に付けておきます。毎日の
テープでのバックアップに加えて、1〜2週間に1回、1つのディ
スクをもう1つのディスクにクローンを作ります。テープでのバッ
クアップだと、普通はユーザー部分だけでしょう。システム部分ま
で取ろうとすると、面倒臭い。だから、システム部分を含めて全部
をディスクごとクローンするんです。このごろ、ディスクも安くなっ
て、2Gバイトでも10万円ぐらいでしょ。

Y:安い店に買いに行かれるんですか?

M:インターネットで「いつもの送ってよ」とアメリカに電子メー
ルを出すと、3、4日で送ってきますよ。支払いは、クレジット・
カードにチャージされるだけ。ディスクが着いたら、それに丸ごと
コピーしておけば、ディスクがクラッシュしても安心です。

 「人間は間違えるもの、機械は壊れるもの、バグはあるもの」な
んですよ。「壊れない方がおかしい」と思っていれば、間違いはあ
りません。うちがコンピュータを入れてもう10年以上ですが、これ
をポリシーにしているので、困ったことは起きていませんよ。

Y:なるほどねえ。


*メディアはすべて消耗品と割り切る

M:たとえば、うちのサーバーは、ディスクを二重化 [注36] して
いて、かつ、データ部分は毎日DAT [注37] にバックアップを取り、
1か月に1回は別の機械にコピーして、毎日1回はまた別の機械に
コピーして、と合計4コピーあります。だから、ディスクが壊れて
も「あっそっか」という感じです。何かあるたびに冷や汗をかくな
んていやでしょう。

ディスクも安くなって、1Gバイト [注38] あたり5万円以下です。
消耗品として買える20万円 [注39] で4Gバイトのディスクを買っ
たとして、それで、どれだけの冷や汗が防げるかを考えると、ディ
スク代なんてたいしたことはないんですよね。

Y:冷や汗をかきながら数日をつぶすほど悲惨な経験はない……。

M:たとえば、うちの会社の3人が2日間つぶすとなると、20万円
ではすまないでしょう。ディスクも消耗品と考える時代になったん
ですよ。このごろ、フロッピーを1枚いくらって考える人はいない
でしょ。これは、手紙を書くときに、便箋が1枚いくらかなんて考
えないのと同じなんですよね。

Y:本当に安くなりましたからね。

M:昔、8インチのフロッピー [注40] が1枚5,000円、ビデオ・
テープが1本1万円ぐらいした時代もありました。ああいうのは、
メディア(媒体) [注41] とはいえないんでしょうね。メディアと
いうのは、安くてちり紙のようなものであるべきなんですよ。そう
じゃないと、逆にメディアのことばっかり考えてしまい、内容のこ
とを考えなくなってしまうでしょう。そういう意味ではインターネッ
トも同じで、メディアだけが注目されていて、内容が重要視されて
いない。今後、変わってくるだろうと思っていますが。原稿用紙が
重要なんではなくて、そこに書いてある小説なり絵なりが重要なの
と同じことですね。

Y:ワープロが出始めたころ、どんなひどい文章でもワープロに入
力してプリンタで印刷したら立派なものに思えた時期がありました。
いまのインターネットも、そんな時期なのかもしれませんね。


*信じる者はだまされる

Y:ディスクをクローンするシェル・スクリプト [注42] を書かれ
たそうですが、そのスクリプトを雑誌で紹介することは可能でしょ
うか。

M:はい。見せてもいいですが、「ディスクを壊しても責任は持て
ません」と強くいっておく必要がありますね。「どうなっても私た
ちを責めないでください」って。:-)

Y:さっきの話に戻りますけど、ディスクって、ちょっと間違えた
だけでも簡単に壊れますからね。

M:tarコマンド [注43] でテープにディスクのバックアップを取
ろうとして、リダイレクション記号の右向きと左向きを間違え、テー
プ内容をディスク・ブロックの最初から書き込んだ人がいました。
実は、これはうちの家内が犯人ですが、彼女によれば「それぐらい
はコンピュータが判断して禁止してくれなきゃだめよね」とのこと
です。:-)

Y:私もそう思います。「どんな変な命令でもあっさり実行してし
まう」というのが、いまのコンピュータの短所ですよね。「どんな
つまらない命令でも文句一ついわずにやり続ける」という長所の裏
返しでもありますが。

M:うちの掟では、「rmコマンドを*と一緒に実行するときは、何
をやるにしても他の人に見てもらいましょう」ということになって
います。たとえば、「rm *.dat」とやったつもりが、「rm * .dat」
とやってしまったら、“*”と“.dat”の間に誤ってスペースが入っ
ていたというだけで、そのディレクトリにあるファイルは全部消え
てしまうんですよ。本当は、語尾が“.dat”で終わるファイルだけ
を消したかったのに。

Y:「どこどこのディレクトリにいる」と信じ込んで「rm -r *」
を実行して失敗したという話も知っています。

M:cdが必ずしも成功するとは限らないでしょう。だから、シェル・
スクリプトを書くときも、まずcdとやったら、pwdコマンドできち
んとディレクトリが変更できたことを確認してから、何かを実行し
ないといけないんです。「人間は間違えるもの」ということを常に
意識して、「信じるものはだまされる」と思うことも、ルートとし
ては大切なことかもしれません。ディスクをクローンするシェル・
スクリプトを利用するにあたっても、お勧めしたいのは、環境をみ
んな同じにしておくことです。たとえば、「SCSIの4番は必ずテー
プだ」と決めておけば、かなり安定するでしょう。

Y:「ディスクをコピーするシェル・スクリプト」を雑誌の中で紹
介するのが怖くなってきました。「責任はとらないよ」といって紹
介したとしても、もし使い方を間違って、新しい方のディスクの内
容を大切な方に上書きしてしまう人がいたら、やっぱり申し訳ない
し……。といって、ここで引っ込めるのもねえ……。:-)

M:では、本当に重要な部分だけ紹介してはどうでしょう。「パー
ティションをコピーして、fstabを変更し、ブート・ブロックを書
き込む部分」です。これさえ分かれば、使える人には使えるでしょ
うし、使いこなせそうにない人は使わないでしょうから(リスト)。

Y:それは名案ですね。そうしましょう。

------リスト-------

#!/bin/sh -

#	This scripts copies 3 partitions (a, d, e from the original disk
#	and copy them to the new disk.  It will also make the new disk
# 	bootable

#----Where is supporting data and scripts?----
HERE="/usr/local/setup"

#----Distination disk----
#	Assume that original disk is sd1 and destination is sd2

(中略)

#	copy partitions
cd /int.root; /usr/etc/dump 0f - /dev/rsd1a |/usr/etc/restore rf -
cd /int.usr; /usr/etc/dump 0f - /dev/rsd1d |/usr/etc/restore rf -
cd /int.data; /usr/etc/dump 0f - /dev/rsd1e |/usr/etc/restore rf -

#	fix fstab
cp $HERE/fstab-sd2 /int.root/etc/fstab

#	make it bootable
/usr/kvm/mdec/installboot -vlt /int.root/boot /usr/kvm/mdec/bootsd /dev/rsd2a

------リストおわり-------


*怠け者インストールのススメ

M:うちは「インストールとはディスクを機械に付けること」であ
るべきだと思っているんです。小さなソフトウェアを売っているの
ならテープでお客に渡せばいいのですが、うちのようにシステムご
と客先に納入している場合、客先に行ってピーキャピーキャとテー
プをディスクに読ませるのはかっこ悪いでしょう。それに、そのよ
うにインストールしていると、壊れたときにはもう一度それをやら
なければいけないということでしょう。だから、ディスクの脱着型
のインストールを実行しています。ワークステーションを売ってい
る会社にもお勧めしたいですね。

Y:今後、ディスクの脱着型のインストールが、「新しいインストー
ル」として定着するかもしれませんよ。

M:「怠け者のインストール」かもしれない。:-)

 あと、ルートとしてのアドバイスとしては、「一度は自分でやっ
てみること。他人を信じてはいけません。自分も信じてはいけませ
ん」です。:-) 薬屋というのは、びんに粉を入れるときも、非常
に気をつけます。何重にもチェックするし、鉄則としては、薬を作
る前に入れる容器を準備して、きちんとラベルも貼ってしまう。全
部準備ができてから、もの(薬)を作ってただちに入れるんです。

Y:なるほど。「フロッピーにファイルを保存するときは、先にラ
ベルを貼って内容を書いて、それからディスクにフロッピーを入れ
てファイルを保存するとよい」という教訓に通じるものがあります
ね。


「インターネットを趣味にも活用」

*日本初のベルリン方式水槽

Y:では最後に、「濾過槽なしの無脊椎動物(サンゴ)水槽
(Berlin Style)」の話をしていただきましょうか。実は、ここに
くるまでは、「これはいったい何だろう」って思っていたんですよ。
単に冗談なのかもしれないとも思いました。で、この部屋に入って
きて、大きな水槽が置かれているのを見て、「ああ、本当に水槽で
サンゴを飼っておられたんだ」って思ったんです。すごく大きくて
立派な水槽ですね。

M:'95年4月に、写真付きで日本経済新聞に載った [注44] こと
で、最近では、こっちの取材も多いんですよ。見てみますか?

Y:(水槽の中を見ながら……)あれがサンゴなんですね。動いて
ますね。ひょっとしてこれ、「竜の落とし子」 [注45] ですか? 
こんなに近くで見るのは初めてです。

M:この水槽には、濾過槽がないんですよ。日本では、海水魚とサ
ンゴを飼育する場合、濾過槽が絶対必要だといわれていますから、
みんな当然のように付けているんです。1年前に、インターネット
のrec.aquaria [注46] というニュース・グループの記事を読んで
いたら、プロテイン・スキマーと呼ばれる泡立て機を使い、ライブ・
ロック [注47] を水槽に入れておけば、濾過装置はいらないことが
分かったんです。それが、「ナチュラル・システムの流れをくむベ
ルリン方式」なんですが、日本では知られていなかったんですね。
さっそく、ライブ・ロックを取り寄せて、最初に小さな水槽で試し
て成功したわけです。

Y:日本では初めて実行されたんですか?

M:たぶんそうです。

Y:そんなすごい情報が転がっているところが、インターネットら
しいですね。

M:水槽については、『フィッシュマガジン』(緑書房発行)7月
号に詳しい記事を書きましたので、もし興味があれば、そちらを読
んでください。

Y:分かりました。水野さんには、インターネットを使ってうまく
ビジネスをされているうえに、趣味の世界でもインターネットを活
用されているという、本当によい例を見せていただきました。ルー
トさんとしての話も、とても参考になるし、面白かったですよ。お
忙しいところを、長い時間、どうもありがとうございました。

M:今度は取材ではなく遊びにきてください。

Y:ありがとうございます。楽しみにしています。


[注1]  Liberty System

オブジェクト指向プログラミング言語C++を使って開発された、
薬剤師支援システム。UNIXワークステーションを使ったクライアン
ト・サーバー型のシステムである。水野では、'93年7月から稼働
を開始している。システムの概要は、「日経コンピュータ
1994-1-24号」に「<ケーススタディ>水野(調剤薬局)COBOLシステ
ムをC++に移行」という記事の中で9ページにわたって詳しく紹
介されている。


[注2]  .COM

ドメイン名の組織種別。COMmercial(営利企業の意)の略。日本の
場合、営利企業の組織種別はco(companyの略)である。


[注3]  日本の商用インターネット・サービス

日本で商用インターネットのサービスが開始されたのは、'92年11
月のこと。


[注4]  JUNET(ジェイユーネット)

'84年に日本で始まった、UUCPベースの実験ネットワーク。海外ネッ
トワークとのリンクも確立していた。'94年に発展的解消をとげ、
現在のWIDEにいたる。JUNETもWIDEも、利用を学術研究に限定。


[注5] UUNET

'87年にできた米国の商用インターネットの会社。それまで課金と
いう考え方とは無縁だったUUCPによるネットワークに対して、通信
量に応じた課金を行うことで、経済原則を導入した功績は大きい。


[注6]  UUCP

UNIX to UNIX Copy Protocolの略。UNIXシステム間で電話回線を使
用してファイル転送を行うためのプロトコル。


[注7]  IP

Internet Protocolの略。インターネット上のネットワーク・プロトコル。


[注8]  FireWall

インターネットにIP接続されたネットワークを不法な侵入から保護
するためにゲートウェイに設けるアクセス制限。


[注9]  WWW

WWW(World Wide Web)は、'89年、スイスの欧州粒子物理学研究所
(通称CREN)が開発した情報提供システム。クライアントとサーバー
との通信プロトコルにはHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)を
用いる。情報は、HTML(HyperText Markup Language)という記述
方法で書かれている。ちなみに、webは、「クモの巣、クモの巣状
のもの、〜網」という意味である。


[注10]  ルーター

LAN同士を相互に接続するための装置の一種。TCP/IPを例にとると、
LAN間接続装置の一種であるブリッジがIPアドレスを透過させるの
に対して、ルーターはIPアドレスを見てデータ(パケット)のルー
ティング(中継経路設定)を行う。


[注11]  ゲートウェイ

異なるプロトコルのシステム/ネットワークを相互接続するための
装置。LAN-WAN接続装置のように、異なるネットワークを相互接続
する(あるネットワークのゲートとなる)機器を指すこともある。


[注12]  Proxy機能

プロキシー(代理)機能。直接外部とIP接続されていない内部ホス
トからのWWW、Gopher、WAIS、ftpなどを代理で外部に発行する機能。
ロシアの揚げパン(ピロシキ)のことではない。


[注13]  POP

ポップ。Post Office Protocolの略。POPは、配送されてきたメー
ルの置かれる(スプールのある)計算機にログインすることなく、
配送されたメールを読むことを可能とするプロトコルのこと。また、
POPのプログラムをPOPサーバーと呼ぶ。


[注14]  SMTP

エスエムティーピー。Simple Mail Transfer Protocolの略、
TCP/IPを用いたメール配送のプロトコルのこと。


[注15]  CERN httpd

httpdとは、WWWのためのHTTPサーバーのこと。NCSA httpdが純粋に
サーバーとしての機能だけを追求したのに対して、CERN httpdには
FireWall環境で使用するときに便利なProxy機能が組み込まれてい
る。


[注16]  HTML

Hypertext Markup Languageの略。WWWのハイパー・テキストの記述
に使われているマーク・アップ言語。ハイパー・テキストとは、テ
キストに対して他のテキストや画像をリンクさせることによって、
対話的に読むことのできるテキスト。


[注17]  でたらめな(unofficial)IPアドレス

水野薬局の内部では、独自に割り当てたIPアドレスが使われている。
それらのマシンからは、直接インターネットには接続できない(し
ない)ため、不都合は生じていない。


[注18]  JPEG

ジェイペグ。Joint Photo graphic Experts Groupの略。静止画像
情報の圧縮方法の一つで、自然(風景)画像の圧縮に適している。
この圧縮方法は、非可逆圧縮と呼ばれる(画像データの劣化が生じ
る)もので、完全な復元はできない代わりに圧縮率は高い。JPEG 
という名称は、技術委員会の呼称が、そのまま規格名としても用い
られているもの。


[注19]  GIF

ジフ。Graphics Inter change Formatの略。マルチメディアで用い
られる静止画像情報の圧縮方法として、最も広く普及しているもの
の一つ。256色までしか表現できない。


[注20]  LAN

Local Area Networkの略。比較的狭い地域に分散設置された各種コ
ンピュータを結ぶ構内ネットワーク・システム。


[注21]  TCP/IP

Transmission Control Protocol/Internet Protocolの略。米国の
ARPANETというネットワーク用に開発されたプロトコル。


[注22]  第二種電気通信事業者

電気通信事業法のもとで、自らは回線を設置しないで第一種電気通
信事業者から回線を借りる形で電気通信を行う事業の総称。第一種
電気通信事業者とは、NTTやKDDのように自ら回線を設置してサービ
スを行う事業者。


[注23]  特別第二種電気通信事業者

電気通信事業法の分類による電気通信事業者の一形態。自らは回線
を設置しないで通信サービスを行う事業者のうち、政令で定める基
準(1200ビット毎秒換算で500回線)以上の事業者、あるいは専用
線による国際間サービスを提供する事業者をいう。


[注24]  IIJ

日本の商用インターネット・サービス・プロバイダの1つ。


[注25]  NTT DoCoMo自由文型ポケベル

ポケベルの販売店で「T型ポケットベルの自由文対応」といえば、
買えるようである。しかし、カタログにも載っていない型式のため、
在庫していない販売店も多いようなので、あらかじめ問い合わせし
てから買いに行った方がよいだろう。


[注26]  ソフマップ

中古のコンピュータの買い取り、販売を行っている店の名前。固有名詞。


[注27]  aloha.net

詳細は http://www.aloha.net/ を参照。


[注28]  PPP

Point-to-Point Protocolの略。ダイヤルアップIP接続時に用いら
れるプロトコル。


[注29]  市内通話料金はただ同然

アメリカの電話料金は地方(電話会社)によって異なるが、市内通
話は1か月1,000円程度の固定料金を払うだけの、月額固定料金の
制度が普通である。これが、アメリカでのネットワーク通信の普及
に大きく貢献している。


[注30]  .forwardファイル

まめちしき@を参照。


[注31]  プログラムを雑誌で紹介

このプログラムは、alpha-pagerとしてLouis A. Momokosという人
が作ったものを、水野さんが大改造されたもの。


[注32]  Tcl

シェルやperlと同じようなインタプリタで、アプリケーションごと
にマクロ言語を作るような無駄を省き、他のアプリケーションでも
同じようにマクロを使えることを目指した言語。「ティクル」と発
音する。


[注33]  expect

まめちしきAを参照


[注34]  クローン

本来は親と同じ遺伝子組成を持つ個体または細胞を意味する。これ
を転じて、回路構成や組み込みプログラムをそのまま複製した機器
をクローンと呼ぶ。ここでは、「まったく同じ内容の2つ目のもの」
という意味で使っている。


[注35]  SCSI(スカジ)

Small Computer Systems Interfaceの略。小型コンピュータと周辺
機器(HDD、光磁気ディスクなど)を接続するため、'86年にANSI
(米国規格協会)が定めたインタフェース規格。


[注36]  二重化

2台のCPUを設置して、一方を稼働し、もう一方を待機用とする。
稼働中のシステムに障害が起こったときは、待機させていたシステ
ムに切り替えて処理を続行する。二重化したシステムは、その複製
が常に可能になっているため、信頼性が向上する。


[注37] DAT

Digital Audio Taperecorder。幅3.81mmの磁気テープに音声信号を
デジタル記録する装置。音声や音楽の記録・再生のほか、データ記
録用(主にHDD上のデータのバックアップ)に使われている。


[注38]  1Gバイト

1ギガ・バイト。10の3乗がK(キロ)、10の6乗がM(メガ)、
10の9乗がG(ギガ)。


[注39]  消耗品として買える20万円

税法上、取得価格が20万円未満の減価償却資産の購入費用は、消耗
品費として一時の経費として処理できる。一方、20万円以上の減価
償却資産は、税法上決められた耐用年数に基づいて、費用配分する
ことになる。


[注40]  8インチのフロッピーディスク

IBMが'72年、8インチ片面ディスクを使用した「IBM3740データ・
エントリー・システム」を発表し、紙カードや紙テープに代わる入
出力媒体として使われるようになった。当初、8インチ片面密度の
フロッピーの記憶容量は 256Kバイトだったが、その後両面化され、
さらに記憶方式が単密度から倍密度へと改良された結果、両面倍密
度のもので1Mバイトを超える記憶容量を持つようになった。


[注41]  媒体

情報処理の分野で、とくに情報をたくわえる媒体物、情報を伝える媒介物。


[注42]  シェル・スクリプト

実行したい一連のコマンドをファイルに保存したもの。


[注43]  tarコマンド

テープ・ファイル・アーカイバ。複数のファイルを1つのtar形式
のファイルにまとめるもので、ファイルをテープに保存して、必要
なときに再びディスクに取り出すバックアップにも使われる。


[注44]  新聞に載った

'95年4月15日(土)日本経済新聞「インターネットの達人<個人
利用術とくと拝見>」の中で、水野さんの「濾過槽なしの無脊椎動
物水槽」が紹介されている。


[注45]  竜の落とし子

ヨウジウオ科の硬骨魚。頭が馬に似ており、両側にふさ状のえらが
ある。口が長く、先端に歯のないあごがある。からだは骨板でおお
われて硬く、背びれと尾びれがなく長い尾で海藻に巻きつき、直立
して泳ぐ。


[注46]  rec.aquaria

ニュース・グループの一つ。recとはrecreation(レクリエーショ
ン、休養、気晴らし)のこと。aquariaとはaquarium(水族館、養
魚水槽)の複数形。


[注47]  ライブ・ロック

死んだサンゴにたくさんの藻や微生物が住みついたもの。櫓過菌が
生きている。


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UNIXまめちしき@

*着信メールを別アドレスに転送する.forward

 自分に届いたメールを別のアドレスに転送したい場合には、.
forward の設定が役立ちます。たとえば、AというサイトとBとい
うサイトの2か所に自分のアドレスが存在し、Aに届いたものをB
に転送してそこでまとめて読みたい場合、Aのサイトのメール・サー
バーの自分のホーム・ディレクトリに、.forwardという名前のファ
イルを作り、その中にBのサイトのメール・アドレスを記述します。

 たとえば、Aサイトのアカウントがyoshidaで、Bサイトのメー
ル・アドレスがyoshida@kaba.or.jp(このアドレスで、本当に私に
メールが届いたりする)の場合、Aサイトの .forwardファイルに
は、

\yoshida
yoshida@kaba.or.jp

の2行を記述します。この場合の1行目は、Aサイトにもメールを
残しながら転送もしたい場合の命令なので、転送したものをAサイ
トに残す必要がないなら、1行目の記述は省略してください。

 「UNIX の初心者が、別の人の各種設定ファイルを自分のホーム・
ディレクトリにコピーして使っていたら、別の人の .forwardファ
イルまで、内容をそのままでコピーしていて、自分に届くべきメー
ルが、その別の人にすべて転送されていた」という失敗談や、「社
外には出してはいけない内容のメールが、.forwardで社外に転送さ
れて、たまたまエラーでシステム管理者に届いてしまって大変なこ
とになった」などという危険な話もありますので、.forwardによる
メールの転送には、くれぐれもご 注意くださいませ。

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UNIXまめちしきA

*対話型プログラム自動化ツールexpect

 expectはTclの拡張ツールとして、Tclで対話的なプログラムを作
るときに使われる「対話型プログラム自動化ツール」です。そのた
め、expectを使うには、Tclもインストールしておく必要がありま
す。Tclとexpectはどちらもフリー・ソフトウェアとして、主要FTP
サイトに置かれています(たとえば、ftp://ftp.sra.co.jp)。

 シェルは、2つのプロセス間で双方向のデータ・フローのやり取
りができません。たとえば、プロセス1の標準出力はプロセス2の
標準入力へパイプでつなげますが、プロセス2の標準出力をプロセ
ス1の標準入力から読み込むことはできません。

 しかし、expectでは制御したいプロセスを、まず最初にexpectか
ら起動することで、双方向のデータのやり取りができます。

 たとえば、

#!/usr/local/bin/expect --
spawn ftp [lindex $argv 0]
expect "Name*"
send "anonymous\r"
expect "*ssword:"
send "yoshida@kaba.or.jp\r"
expect "ok"
interact

というスクリプトは、「Anonymous FTPの際に、ログイン名として
anonymousを入力し、パスワードの部分に自分のメール・アドレス
を入力する」という部分の手間を省くためのものです。

 ちなみに、カレント・プロセスの出力から指定されたパターンを
探すのがexpectコマンド、カレント・プロセスにデータを送るのが
sendコマンド、そして、スクリプトからユーザーに制御を渡したり
その逆を行うのがinteractコマンドです。

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(UNIX USER誌連載「よしだともこのルート訪問記」より)
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